[1] 古民家で宝探し|勇気とその対価
2017/03/16
先月の終わりのこと。
郵便局へ向かういつもの馴れた道沿いに、数台のトラックが停まっていました。
どうやら近くの古民家を解体するようです。
この辺りは、かつて甲州街道沿いの宿場町として栄えた時期があります。その為か、趣のある古民家が散見される通りでもあります。
古道具の観点からも、小屋作りなどのDIYの観点からも、この状況は明らかにチャンスです。
しかし、頭では分かっていても、それを行動に移すとなると話はまるで変わります。
逸る気持ちを抑え、先ずは郵便局で用事を済ませました。
頭の中では既に職人さんに声を掛ける算段を始めてはいますが、どうしてもネガティブな感情が拭えません。
それは以前にも同じような場面に遭遇したことがあり、そのいずれも結果が伴わなかったからです。
けんもほろろに、といったあしらい方だった印象が強く、苦手意識があったのです。
この手のいわゆる〔うまい話〕は何度か聞いたことがあるし、実際に古道具を売って生活している方々(※少し憧れがあります)はこのような状況を日常的に経験しているのです。
ですが僕はどうもうまくいかず、そのうちにこの〔うまい話〕は、〔都市伝説〕に変化していったのです。
心配するよりも行動してしまった方が、いつまでも不安な気持ちを引きずることなく健全かもしれません。
ダメもとで聞いてみれば良いだけなのです。
※このようなことを自分に言い聞かせ、行動に移しました。
比較的若く見える二人の職人さんが、丁度煙草休憩をしていました。
車を停める場所が見当たらなかったので、一旦現場を通り過ぎ、などをしつつ、職人さんの許へ向かいました。
(※出来るだけ元気に明るく、、)
「こんにちは!お仕事中申し訳ないのですが、もし廃棄する建材があればいただけないかと思いまして...」
「梁とか欲しいの?良いよ!」
親方と思われる方が即答してくれました。
あまりにスムーズに進むので、〔阿云の呼吸〕ってこんななのかな?などと、今考えなくてもいいことが頭をよぎるほどでした。
さて、前置きは終わりです。
傾きが酷く、潰してしまうしかないそうです。
親方が言うには、この解体する古民家自体と古民家の中の残置物全て、〔廃棄物(ゴミ)〕となるので、少しでも持っていってもらえると助かるというのです。
にわかには信じられませんでした。
遠慮がちな僕に気を遣ってくれているのではないかと錯覚するほどです。
「大きな梁なんかは、トラックで持っていってあげるよ」
思わぬ好待遇に戸惑いながらもニヤケそうになっている僕と同様に、親方もすこぶる機嫌が良さそうに見えました。
もしかしてこれが世に言う「ギブアンドテイク?」
僕からしたら幸運以外のなにものでもないのですから、これほど素晴らしいことはありません。
幸運だ、幸せだと全身が小刻みに震えます。
更に親方は、解体に着手したばかりの古民家の中を見せてくれ、何か欲しいものはないか聞いてくれました。
古民家に入り直感しました。
「あぁ、これは宝の山だ...」
最初に目に入った立派な〔棚〕や、〔古い竈(かまど)〕、上手に作られた〔木戸〕や〔ガラス窓〕、〔細かな古道具〕、そして〔立派な梁〕、今では殆ど使われなくなった絶縁のための〔碍子(がいし)〕や〔ブレーカー〕などを確認し、あれもこれもと連呼していました。
この丸い石は〔石挽き〕といって、小麦や蕎麦を粉状にするためのものですが、残念ながら対のもう一枚が見当たりませんでした。
どうやらこの古民家は、元は薬局だったらしく、一般家庭ではあまり目にしないような珍しい古道具が出てきました。
聞くところによると、この建物は少なくとも明治以前に建てられたものだというのです。
明治時代は〔1868年 – 1912年〕ですから、少なくとも100年以上前の建物ということになります。
解体現場での交渉がうまくいったのは始めてのことでしたが、それがいきなりの大金星だったかもしれません。
※比べる経験がないので、そのように感じるだけかもしれません。
この現場に入ってから2週間が経過
欲しいものをバールで剥がしたり、〔土壁(!)〕を集めたりしたのは古民家が家の形を留めていた数日間だけで、後はトラックで運ばれてくる大きな梁などを、職人さんと一緒に家の敷地内に下ろすといった、非常に恵まれた作業内容でした。
以前の僕と同じように、このような〔うまい話〕を〔都市伝説〕だと思っている人もいると思います。
そこで、出来るだけリアルな行程を時系列にしてまとめてみました。
次回はこのスケジュールをもとに、記事を書いていこうと思っています。
これから書く記事が、価値ある古道具や立派な建材の損失を防ぐ一助になれたらと思っています。