自作トレイラーで小屋から小屋へ|映画の中の小屋 その12
2017/02/17
おひさしぶりの「映画の中の小屋」でございます。
今回は10年近く前の映画「ストレイト・ストーリー」です。
タイトルの「ストレイト」は主人公のおじいさんの名前「アルヴィン・ストレイト」からとったもので、これはひとりのおじいさんの物語というわけなのです。
特筆すべきは、この冒険譚が実話ベースであるということでしょうか。
実在のおじいさん「アルヴィン・ストレイト」さんが自宅のあるアイオワ州から弟の住むウィスコンシン州まで、古いジョンディアの芝刈りトラクターで自作トレイラーを牽引して州をまたぐ大冒険をした話がニューヨーク・タイムズ紙に掲載され、それがきっかけで映画化の運びとなったそうです。
時速数キロの歩くようなスピードで移動しながら道々キャンプをする様子、途上に出会う若者や同年代の老人たちとの交流を描いたロードムービーです。
アメリカではディズニーの配給だったので「つらい展開にはならないだろうなー」と気楽に見ることができました。
それでは「ストレイト・ストーリー」にどんな小屋が登場するのか見てみましょう・・・。
まずは主人公のアルヴィンと娘のローズの住む家です。
アメリカではスモールハウスの部類に入るのではないでしょうか??
画像では家が切れてしまっていますが、ここに写っているのが屋敷のほとんどだといっていいくらいの大きさです。
そしてこれがアルヴィンが自作したトレイラーです。
中は荷物を入れる他、寝床になっています。
トレーラーから這い出してきた寝起きのアルヴィン。
キャンプは地面に直接焚き火で済ませている場面がほとんどでしたが、途中で知り合った男性の庭に逗留したときにはコールマンのツーバーナーのガステーブルを出していました。(借りたのかも?)
タープも張ってなかなか快適そうです。
(この画像では見えませんが、生木の枝を支柱にしてモスグリーンのタープが張ってあります)
そしてこれが、アルヴィンの旅の目的地である弟ライルの家。
ライルの家は本気のスモールハウスです。
だいぶ錆び付いた感じになっていますが、ぱりっとしたカントリーハウスよりも好きです。
そういえば映画の途中で気になった建築物がありました。
物語の前半、アルヴィンがトラクターでその建物の前を通り過ぎるだけのほんの数秒のシーンです。
ぱっと見たところ岩なのか何なのかよくわからない奇妙な茶色い塊・・・。
「あれ?シュヴァルの理想宮?」
と一瞬思いましたが、シュヴァルはフランスでこれはアメリカで撮られた映画だから違うなあ、と思い直して調べてみましたら、アイオワ州にあるGrotto of the Redemptionという比較的新しい礼拝堂とのことでした。
「Grotto of the Redemption」はドイツからの移民牧師 Paul Dobberstein によって1912年に建設がはじまり、その後人の手を借りつつ約42年もの歳月をかけて人力で完成させたという大作です。
Dobberstein が採った建設方法は、コンクリートの中に岩や宝石を埋め込んでいくというものでした。
たくさんのめずらしい石や貝や化石、宝石を集めて建てられたこの礼拝堂の装飾部の時価は400万ドルを超えると言われています。
また1930年代にはアメリカでこういった岩屋風の教会を作るのがブームになったというのが興味深いです。
郵便配達人であったシュヴァルの作った石の宮殿は、実際には住まずに地下に家族一同の墓を安置する予定だったとか言いますから、かつての教会では地下に死者を埋葬していたという点では両者は同義と言えるのでしょうか?
こういった「途方もない歳月と労力をかけて、誰かがこつこつと作り上げた途方もない作品」には不思議と惹かれます。