サファリとテント暮らし、寝台列車|愛と哀しみの果てより|映画に登場する小屋 その3
2017/02/24
今回の映画に登場いたします小屋は、旅先の小さな暮しと小さな住処です。
「愛と哀しみの果て」
(原題:Out of Africa)
1985年の作品
この映画は、おそらく原作のほうが有名かと思います。
それにしても「愛と哀しみの果て」という日本語の題名がどうにもそそられないような気がしてもったいないなあと思うんです。
カレン(主人公)が作中何度も「わたしはアフリカに農場を持っていた…」と懐かしんでいるし、これは農場に始まり農場に終わる実話なんですから、いっそ翻訳本のタイトルのまま、「アフリカの農場」とか「アフリカの日々」にしたらよかったのに…。
そうなんです、これは1900年代初め頃に生きた女性、アイザック・ディネーセンの描いた彼女自身のアフリカでの生活を元にした実話なのです。
地位はあるけれどお金のない男性と、お金だけはあるカレン。
お互いの利害を一致させた契約的な結婚を機にアフリカへと向かい、そこでコーヒー農場を始めることにしたカレンでしたが、農場も私生活も思うようには行かず窮することに。
しかし、くよくよしない性格のカレンはアフリカの隣人たちや野生動物たち、そしてどこまでも広がる大地に励まされながら、アフリカでの生活を大いに楽しみます。
さて、アフリカに到着したカレンが移動に使った寝台列車がこちらです。
鎧張りの外観と、出入り口のシンプルな様子と色使いが良いですねえ。
このまま車両を切り離したら、立派なタイニーハウスになりそうです。
或る日カレンは、数日かけてサファリに出かけました。
その時の野営の様子です。
厚いキャンバス地の三角テントが雰囲気ありますねえ。
これはどうやって設営するかといいますと、3人がかりでロープを引っ張って起こすのです。
途中、カレンが顔や手を洗う場面が何度か出てきますが、キャンバス地の丸い桶に水を入れたものを、木製スタンドに乗せて使っています。
むかしはLLBeanのキャンバストートが氷運搬用だったというのは有名な話ですが、これは折りたたみ式の簡易桶
ということですねえ。
物語の途中から人力車に代わって自動車が登場します。
カレンたちがサファリに出かけたときにも車を使いました。
その時の荷物を満載した車が、なんとも良かったのです。
生活道具を積んで移動し、夜はテントを張って就寝。
食事には折りたたみ式のテーブルと椅子にワイン。
食器も揃って、直火で調理。
これぞ移動式住宅?
カレンはアフリカに来た当初、食器から家具から贅沢な品をひと通り持ってきましたので、空っぽだった広い屋敷は調度品でいっぱいになりました。
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物語の後半、再びカラになった屋敷でカレンとデニス(カレンの恋人)が話をしている場面。
「はじめからこうして(物を持たずに)住めばよかった」
というカレンにデニスは
「きみの持ち物が好きになった」
と答えます。
それを受けてカレンは
「わたしは何も無いのが好きになった」
何かを所有することや、所有したいという欲に批判的であったデニスと、それらに縛られていたカレンでしたが、今やカレンはすっかり断ち切って、やつれた中にも清々しい表情を見せていました。
ところで、キャンバス地のテントや桶もすてきでしたが、これが便利そうでした。
手回し泡立て器。
アフリカの少年コックさんはこれを嫌がって、フォークで泡立てていました。