[天然酵母][レシピ]松の葉サイダー
2017/03/10
5月の終わり頃、僕は自作の炭酸水を追い求めていました。
その頃のブログ記事にいただいたコメントで、「松の若葉に砂糖を入れると発酵してサイダー(炭酸)になる」という貴重な情報をいただきました。
「天然酵母」といえば、レーズン?パン作り?程度の知識しかなかったので、松の若葉でサイダーという発想は少し突飛でした。
本当に炭酸水は出来るのだろうか?
非常に興味が湧いたので、時期が来たら必ずやろうと心に誓いました。
若葉の採取は梅雨開けが良いそうなので、暫くタイミングを図っていましたが、どうも時間が空いてしまうと忘れてしまうことがありますね。
先日、慌てて松の若葉を探しに行きました。
松なんて家のまわりに幾らでもあるのですが、どれも小屋の倍以上の高さがあり、とても先端の若葉を取ることは出来ません。
幸い職場の庭に背丈1m程度の赤松がありました。
これはここ数年の内に飛来した種から発芽したものです。
先端にはなんとも[フレッシュな若葉]がついていました。
オーナー夫婦に断って、この新芽をいただいてきました。
松の葉サイダーの作り方
松の葉を手に入れた後も何かと慌ただしく、更に数日寝かせてしまいました。
このままではいけないと思い、真夜中でしたが松の葉サイダーを作るべく立ち上がりました。
1.松の葉を軸から外す
2.付け根の処理と妄想
3.水に砂糖を溶かす
4.仕込み完成
5.発酵させる
6.出来上がり、試飲
1.松の葉を軸から外す
サイダー作りに使うのは葉の部分だけです。
軸から一本づつ葉を外していきます。
まるで髪の毛を抜いているような錯覚に陥ります。
抜く度に痛みが走るようです。
おかしな妄想をしてしまうのは、単純作業の繰り返しと、"深夜のせい”かもしれません。
2.付け根の処理と妄想
スポスポと綺麗に抜けるのが7~8割くらいです。
残りの2~3割の葉の根っこには、茶色い、萼(がく)のようなものが付着しています。
この茶色い部分も綺麗に取り除かなくてはなりません。
左が綺麗に抜けた葉。右が綺麗に抜けなかった葉。
綺麗に抜けたものと抜けなかったものを予め分けておけば良かったのですが、頭が回らず一山にしてしまいました。
その為、選り分け作業が必要になりました。
余計な作業を増やしてしまうのも、単純作業の繰り返しと、"深夜のせい”かもしれません。
綺麗に抜けなかったものを見つけては、1本づつ丁寧に処理していきます。
思いのほか数が多く、延々と同じ作業が続きます。
真夜中にLEDの小さな明かりで作業をしています。
大分飽々してきました。
ウトウトしながらの作業中、カクっとした拍子に懐かしい記憶が蘇りました。
かつて「ガチンコ」という、TOKIOの番組がありました。
そのなかのひとコーナーに、「ガチンコラーメン道」というものがありました。
この番組は毎回必ず揉め事が起こり、それが見どころでもありました。
例えばラーメンのスープを作る為に必要な鶏ガラの下処理をする場面で、入門者は先生の言うことを聞かず綺麗に処理をしませんでした。
それを先生に見咎められるのですが、入門者は言うに事欠いて、「この方が良い出汁が出るんだ!」と開き直る始末です。
※鶏ガラとは違う場面ですが、ガチンコラーメン道のイメージはこんな感じです。
※ラーメンの鬼として知られた佐野実さんは63歳でお亡くなりになったようですね。残念です。
僕も反抗的な入門者に倣い、
「天然の酵母はこういった根本に多く宿っているんだ!」などと嘯きたい気持ちで作業をしていました。
※実際の処理は丁寧に行っています。
根本の茶色いところの処理が進み、青々とした松の若葉が大半を占めていきます。
すると仕上がった松の若葉をみて、更に妄想は広がっていったのです。
今度は、漫画「将太の寿司」を思い出しました。
客の減ってしまった寿司屋で、「芽ネギ」のお寿司を出すようにしたら客が戻ってきたというエピソードです。
芽ネギとは、松の葉のように細く尖っています。
一度は食べてみたい!と思ってから何年が経ったことでしょう?
未だに食べることが出来ていません。
[将太の寿司と芽ネギの写真]
様々な思いが交錯しながらも、処理は淡々と進みます。
年代的に何を言っているのか理解出来ない若い方もいると思いますが、そんな配慮が出来ないほどに、この記事を書いているときは眠かったのだと思います。
3.水に砂糖を溶かす
松の葉の量に合わせて容器を準備します。
出来るだけぎっしり入れた方が良いらしいです。
容器が見つかったら水を入れてみて、何cc入るか調べます。
水量の1割の砂糖を用意し撹拌します。
※容器は煮沸消毒します。
※松葉も良く洗います。
4.仕込み完成
砂糖水に松の葉を入れ、蓋を閉めたら出来上がりです。
葉の下処理は僕の段取りが悪かったために手間取いましたが、本来はとっても簡単です。
そもそも、ハサミなどを使って根本の方で切ってしまえば下処理の手間がなくなり、もっと簡単に大量の酵母作りが出来るかもしれないと、仕込みが終わってから気が付きました。
5.発酵させる
日中は日の当たる場所に出し、日没後は部屋の中へ戻します。
何度か部屋に戻し忘れたこともあるので、その辺りを少し心配しています。
あらかじめ瓶の蓋を緩めておくか、たまに緩めて、充満したガスを抜くと良いそうです。
3~5日間くらいでサイダーが出来上がる予定です。
※追記1
軽く蓋を緩めた状態で日の当たるところに放置していたら、何処からともなく現れた「蟻」に松葉サイダーが襲われていました。
幸い発見が早く、ビン内部に入られることはなかったのですが、外に放置するのは少し不安になりました。
アリ騒動の後は、部屋の窓際に置いて醗酵を促すことにしました。
※追記2
仕込みから5日経った時点で蓋を開けてみましたが、炭酸が発生しているように思えなかったので、もう少し醗酵を待つことにしました。
最終的に10日間寝かせました。
醗酵が進まなかったのは、雨が多くて気温が上がらなかったことと、日中も部屋の中に置いたことが関係しているのかもしれません。
6.出来上がり、試飲
薄く白濁を始めた松の葉サイダー。
正直怖さもありました。
傷んでいるのではないかと。
蓋を開けると、「シュッ」と、炭酸の音が漏れました。
松の若葉に付着していた天然酵母が炭酸を発生させたのです。
薄っすら日本酒のような香りと、強い植物の青い香りがしました。
コップに注いで写真を撮ったら、いよいよ試飲です。
唇を湿らす程度に飲んでみると、「甘い」と思いました。
グイッと飲んでみると、仄かな炭酸と砂糖の甘さ、そしてラムネを薄くしたような味がしました。
大袈裟ではなく本当に「美味しい」と思いました。
氷を入れて冷やして飲めれば最高に美味い筈です。
これは予想外の展開です。
今度は大量に松の葉を手に入れ、もっと沢山作りたいと思いました。
コメントで情報を下さった読者様。
本当にありがとうございました。
松の葉サイダーを飲んで、残り少なくなった夏を存分に楽しみたいと思います。
おしまい。