フンデルトヴァッサーハウスを訪ねて|不思議な曲線ハウスの話
2017/02/24
現在ウチの敷地を、ゆっくりとですが整地しています。
笹の根を抜いて掘り返された地面は、何やら爆撃でも受けたかのように荒れていますが、雨が降ったり人間が歩いたりその他の要因で自然と角がとれてまるくなっていきます。
で、その波打った地面を見ていたら思い出した建築物が。
オーストリアのウィーンにあるフンデルトヴァッサーハウス。
現在も人が住んでらっしゃるので外観しか見れませんが、やわらかな曲線と様々な形状の鮮やかなタイルで飾られている美しいアパートです。
建物内部は床が波状になっていたり、壁が曲がっていたり、また、植物との共生がテーマですので建物自体に木々が茂っているのも特徴です。
噴水だってこの通り、色づき散った葉がよく似合っています。
ウィーンにはフンデルトヴァッサーが設計した建物が幾つかあり、このアパートの他にミュージアムとカフェが併設されている建物(こちらは黒と白を基調とした、植物の緑とのコントラストが美しい屋敷になっています)やユニークなゴミ焼却施設もあります。
ミュージアム(クンストハウス)
ゆったりと流れるドナウ川沿いに突如現れる装飾された煙突。
これはゴミ処理施設なのです。
じつは、日本にもフンデルトヴァッサーさんが設計したゴミ処理場などがあるんです。
日本での作例に、TBSの「21世紀カウントダウン時計」(東京都赤坂、1992年)、キッズプラザ大阪の「こどもの街」(大阪市北区、1997年)や、大阪市環境局舞洲工場(大阪市此花区、ゴミ処理場、2001年)、大阪市舞洲スラッジセンター(大阪市此花区、下水汚泥処理施設、2004年)がある。
wikipedia「フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー」より
「家」を描けと云われて私なんぞが想像するのは、床も壁も天井も直線で構成されたものになるし、実際土のむき出しのデコボコしている地面を見て「均さないと」と反射的に思ってしまうのは、もしかしたら自然から遠ざかった暮らしをしてきた弊害なのかもしれないなあ、なんて思ったのでした。
フンデルトヴァッサーさん曰く「自然には直線的なものは存在しない」「平らな地面は人の為ならず機械の為」(と言っていたと思う)
混沌として派手なデザインは苦手なんですが、私が彼を好きなのは、自然の造形を模倣し、植物と共にある住宅を創ったからなんだと思います。
建物前の石畳だって波打ってます。
そう云えばミュージアム「クンストハウス」には、彼のドローイングやアイデアスケッチが幾つも展示されていて、しかし、訪れたのは随分前のことですし、そのときはゆっくりと鑑賞する時間もなくて記憶も曖昧なんですが、ひとつだけ、とても気になってじっくりと見たスケッチがありました。
それは植物の力を借りる水浄化システムのスケッチでした。
植物の植えられたボックスが横に何層にも連なっている達筆の説明文付きの絵は、自分が現在のような生活をするなんて頭の片隅にもなかった当時でも、どこか引っかかるところがあって、アテもないのに「いつかこのアイデアを試してみたいなあ」と考えながら眺めていたのでした。
確かミュージアム内は撮影禁止だったので、その絵をよーく覚えて外に出て直ぐにノートに書き出してみたはずなんですが、行方不明です・・・。
フンデルトヴァッサーさん設計の建物で、「植物との共生」が全面に出ているものとしては、半渦巻き状のマンションで(渦巻きは彼のテーマモチーフ)、屋上が緑の一大スロープ、上空から見たらあたかも一面草原という大規模な集合住宅(ヴァルトシュピラーレ)というものもあります。
つい直線が基本になってしまいがちですが、曲線もいいなと思ったというお話でございました。
そう云えばガウディも曲線ですね。
ちなみに日本にも曲線ハウスがあります。
三鷹にある「天命反転住宅」です。
室内に直線がないのが特徴の、入居まちをしている人が多い人気の物件だそうです。
フラットな部分がないため、意識的に歩いたり家具の配置に頭を使うことで自然回帰を促すんだとか。
(検索すると室内の様子を写したものが多数あります)
外観内装共に私の好みではないけれど、コンセプトは素敵です。
※ウィーンのフンデルトヴァッサーの建築物に関する私の情報は古いものですので、現在は事情が変わっているかもしれません。