日本ではいまいち。しかしニューヨークで地味に人気のデザートとは!
2019/03/06
謎のブレッドプディング
近頃めっきり映画を見ることがなくなっています。
というのも、新調したパソコンにCDドライバーが装備されていないうえに空前のストレージ不足で、いろんなことをあきらめた結果の映画離れです。
で、そんななかひさびさに見た映画は、これまで30回以上は再生している「STILL ALICE」という若年性アルツハイマーの話で、その「STILL ALICE」の、アルツハイマー初期段階の場面、「得意料理のレシピを思い出せない」というエピソードがあって、その得意料理というのが「ブレッドプディング」。
日本語でいうとパンプリン……。
映画「Still Alice」より
アリス(左端)の前に置いてあるのがブレッドプディング用のパンとミルク、卵と小麦粉。
人気女優クリステン・スチュワート(扮するリディア)がマイフェイバリットだというブレッドプディング。
これまで食べたことがないうえに、映画の中では完成品を見せてくれないので、ずっと謎だったブレッドプディングを作ってみました。
映画「Still Alice」より ブレッドプディング用のパンを抱えるリディア
Bread pudding? - Your favorite. -Yes.
ずっと謎だったブレッドプディングを作ってみました。
参考にしたのは、簡単に作れそうだった「オールドファッション・ブレッドプディング」のレシピです。
材料
2カップ 牛乳
1/4カップ バターまたはマーガリン
2個 たまご(軽く溶いておく)
1/2カップ 砂糖
小さじ1 シナモンパウダーまたはナツメグパウダー
小さじ1/4 塩
6カップ パン (およそ食パン6枚切分) サイコロ状に切る
1/2カップ レーズン(なくてもよい)
ホイップクリーム(なくてもよい)
作り方
1、オーブンを温めておく。鍋に牛乳とバターを入れて中火にかける。バターがとけて牛乳が温かくなるまで。
2、大きなボウルに卵、砂糖、シナモン、塩を入れて混ぜる。パンとレーズンを入れる。(1)を入れる。耐熱容器に注ぐ。
3、蓋をしないで40から45分焼く。容器のふちから2センチくらい内側にナイフをいれて抜いてみて、何も付かなければ焼き上がり。ホイップクリームをのせて食べます。
雨天のため画像が大変暗くなっておりますが、これがブレッドプディングです。
生クリームを添えて食べます。
※今回食パンを使ったため、食パンが液体をすべて吸い込んで正体不明になって、このようなものになりましたが、本来はもっとパンの形が残った姿をしています。(フランスパン的な硬いパンを使うのが主流みたいです)
これはこれで、重厚なケーキみたいに食べ応えのある、はっきり申し上げればプリンではなくフレンチトーストだけども美味しいものができました。
稲作文化のライスプディング
それで。
パンでプリンというなら、ライスでプリンというものもある。ので、今度はライスプディングを作ることにしました。
日本語でいうなら乳粥…。
参考にしたのはトルコのレシピ「Sütlaç (シュトゥラチ)」です。
材料
牛乳 250cc
砂糖 50g(もっと少なくしてもよい)
コーンスターチ 15g
卵黄 1個分
ごはん 20g
バニラエッセンス 少々
シナモン お好みで
作り方
1、オーブンを温める。分量の半分の牛乳、コーンスターチと卵黄をボウルにいれてよく混ぜる。
2、鍋に残りの牛乳、砂糖、ごはんをいれて火にかけてよく混ぜる。沸騰したら①を入れてよく混ぜる。温まったらバニラ・エッセンスを加える。
3、耐熱容器に②を注ぎ、水を天板に張ってオーブンに入れる。
4、焼き色がついたら取り出して、お好みでシナモンをふる。
トルコのライスプディング。見た目は淡泊そうな白いプリンですが……
なんですか、このプディングは。
全卵ではなく卵黄だけを使ったことで、かなり濃厚に仕上がったカスタードプディングの中にライスが閉じ込められている…。ライスは蛇足な気が…… いや、ライスがあることで満足感がかなりアップしている!
……と、このように新しいプリンでした。
けれども。
乳粥といえば、あの例のブッダが無茶な修行みたいなことをして死にかけたときに、さッと手料理を差し出したのは恩人スジャータ嬢。
嬢のおかげで命拾いしたゴータマは、修行の方針を変えて、念願の悟りを開いたわけですが、そのときの料理というのが乳粥だったのでございます。
インドのガヤ市のブッダガヤには、シッダールタが悟りを開いたときに座っていた木があるし、その近くにはスジャータ村というのもあって、仏陀伽耶は正真正銘の乳粥の町なんですけども、わたくし、その町で本場の乳粥を食べたことがあります。
それで、わあ、乳粥って最高!ということになったかというと、なりませんでした。
そのときは、なんだこの不味いものは?と思って、注文したのを後悔したし、はたして完食したのかも怪しいところです。
でも、いま、トルコのうまいライスプディングを食べてしきりに思い出されるのは、インドの寒村の、泥々とした粥のようなライスプディング。というか乳粥で、だから今度はインドの乳粥というか、ライスプディングを作ることにしました。
釈迦がスジャータから貰った乳粥を作ってみました。
レシピはレートの高かったこちらを参考にしました。
材料
2 カップ ココナッツミルク
2 カップ 牛乳
小さじ3 砂糖
1/2 カップ お米(バスマティライス:インドの香り米)
1/4 カップ レーズン
小さじ1/2 シナモンパウダー
小さじ1/2 ローズウォーター(あれば)
1/4 カップ ローストスライスアーモンド
1/4 カップ 砕いたピスタチオ
作り方
1、ココナッツミルク、牛乳、砂糖を鍋に入れ沸騰させる。お米を加えて弱火で混ぜながら、もったりとしてお米が柔らかくなるまで温める。20分くらい。
2、レーズン、カルダモン、ローズウォーターを加え、数分加熱する。
3、器に注ぎ、ナッツ類を散らせば出来上がり。
インドのライスプディング「kheer」。
ココナッツミルクはストックがなかったので牛乳2倍で、ピスタチオとレーズンも無しです。
そうそう、コレコレ!という出来栄え。
普通に美味しかった…。
それで。
せっかくなので、ライスプディングの歴史について書いておわりにしたいと思います。(読み飛ばし可)
「ライスプディングはどこからきたのか?」
じつはライスプディングは世界中に存在していて、南米・アジア・ヨーロッパ・アフリカなど、比べてみると、レシピに多少の違いはあるけれど、ミルクとライス、甘味、スパイスと、だいたい同じようなものを使います。
ところが。
ではいったい、発祥はどこなのか?という話になると、どうもはっきりしたことはわかっていないようです。
1、インド発祥説
「ライス+砂糖+香辛料」という点に着目すると、インドが発祥の地で、そこからアジア方面、ヨーロッパ方面へと伝播したという説。
2、中国発祥説
単純に稲作に注目して中国発祥とする説。
3、ペルシア、つまり現在のイランを発祥地とする説
ペルシアには古くから伝わる「sheer berenj」直訳すると乳粥という料理があり、それをムガル帝国がインドに広め、やがてヨーロッパに伝わったとされる。
イランでは「sheer berenj」アフガン、バングラデシュでは「firni」インドでは「kheer」と名前は変わる。
4、無差別説
サルの芋洗い的に、各地に無関係に生じたという説。
史実としての乳粥
歴史上乳粥について書かれたものはたくさんあって、たとえば、
・6世紀に、ビザンティンの医者がフランク王に宛てた手紙のなかで、「ライスをミルクで煮たものは健康に良い」と書いたとされていたり、
・もしも釈迦の話が史実だとすれば、インドでは紀元前から乳粥が存在していることになるし、
・14世紀のヨーロッパで書かれたベジタリアンのレシピに乳粥そっくりなものが紹介されていたり、
・同じく14世紀のイギリスでは、甘くない乳粥が作られていた記録があったり、
このように枚挙にいとまがないほどなのでやめておきますが、とにかく、乳粥というのは、歴史的世界的に薬膳として食べられていたというのが、乳粥的に大切な部分なのではないかと、まあそんなことを考えておりました。
数年前ですが、マンハッタンにライスプディング専門店[Rice to Riches]ができて、年々売り上げが伸びているほど人気だとかいう記事がありました。(実際かなりおいしそうです……)
もしいまも伸び続けているのなら、そのうち日本にも乳粥専門店ができたりするのでしょうか。
日本には甘酒があるから難しいかなー。