スギ100パーセントのアレを作る
2017/03/02
昔はそれこそ、ジョン万次郎のくじらの話ではありませんが、
「(日本人は)くじらの吹く潮以外、あますところなく消費した」
というくらいに杉を無駄なく使っていたそうで、どの本だったか思い出せませんが、「木」に関連する本に書いてあった例をいくつか書き出してみますと、
剥いた皮は屋根材に。
製材した際の端材は、野菜や果物の木箱・かまぼこ板に。
葉は線香に。
えっ、杉の葉で線香・・・?
杉線香について調べると「駒村清明堂」に行きあたりました。
100年以上、当時と変わらず、杉の葉から線香を作っているという駒村さんの製法は、
1、山から杉を刈ってきて自然乾燥
2、葉を採取し粉末にする
3、杉粉末に湯を注いでこねる
4、線香の形に成型して乾燥
なんだかとってもシンプル!
けれど100年のこだわりが随所にあるんです。
1、樹齢50年以上の杉の、ふわふわした葉を選ぶ。
2、杉を粉末にする際に使うのは水車。
3、山から水を引いてきて水車を動かします。
4、しかも水路は木製で、10年くらいしかもたないそうです。
5、杉粉に混ぜるお湯を沸かすのはかまどで。
6、燃料は、葉を取ったあとの杉の枝。
ちなみに成型は機械で、ところてん方式だそうです。
杉線香についてわかったところで、実際に作ってみます!
うちはそもそも電気もガスもないので、どうしたって100年前の製法に近いものしかできません。
その辺はハードルがかなり低くてよかったです。
STEP 1 杉の枝をとってきて、乾燥させる。
杉の枝を取ってきました。
なかなか立派な杉の木です。
室内に吊るして干しておきます。
葉は枝先に向かうほどにやわらかくて、根本に近い部分は鉤爪のように固くて鋭いのです。
STEP 2 葉だけを集めて粉にしていく
数週間後、からからに乾いたところで、枝から葉っぱだけを集めました。
枝をしごくようにすると簡単ですが、素手で行うとかなり痛い!要軍手です。
ここからは、ひたすら葉を細かく粉状にしていく作業ですが・・・
1、まずははさみで3時間くらい、チョキチョキと刻む
ちょっとだけ細かくなったけれど、まだまだです。
2、はさみ+薪のおしりでゴリゴリ摺る
薪のおしりはあんまり効果なし。
はさみは有効。
3、再びはさみで刻む
少し細かくなってきた・・・
4、乳鉢で摺る(×3回)
粉状になってきた!
5、3種類の大きさの網でふるう
左:網に残った葉、右:ふるったあと
もっとパウダーにしたいところですが、今回はこの辺で次の工程に移ります。
STEP 3 お湯を加えて練る
お湯を少しずつ注いで、練っていきます。
水じゃなくてお湯を使うのがミソだとか。
杉線香のプロ・駒村清明堂さんが言うには「杉に含まれるヤニだけで固まる」とのことなので、加えるのはお湯だけ。
薪で沸かした湧き水を使ってみました。
(暗くてよくわからないけれど、お湯を加えて練ったところ)
おおっ、本当に粘り気がでてきた!
STEP 4 線香のかたちに成型する
練りあがった杉粉を成型していきます。
どうも線香のように細いのはムリそうなので、よくあるコーン型のお香のような形にしてみました。
厚紙を丸めてコーンの形にしたものに、ギュっと詰めると作業がはかどります。
大きさがまちまちですが、手作りということで・・・
お灸っぽいですが、お灸はヨモギで作るんだそうですよ。
それから、どうしても普通の線香の形も作ってみたくて、ストローを使いました。
100均に売っているようなスポイト注射器で搾り出すという手も考えましたが、今回はストローに詰め込んで、押し出してみようかなと思ったんですけど、実際やってみるとボロボロ崩れてしまったので、ストローに詰めたままの状態で乾燥させてみることに。
上:ストローのまま乾燥中。7日経っても内部が乾燥しない
下:カッターでストローのカバーを取り外して乾燥させたもの
2日後、ストロー以外乾燥完了。
いざ、着火テスト!
火の着き良好。
燃え方良好。
匂い良し。
まさに、想像通りのお線香の香りです!
線香の香りは杉の燃える香りだったんですねえ。
煙が沢山出るのが杉線香の特徴とのことで、もくもくと煙が立ちのぼります。
これだけ煙が出るなら、蚊遣りにも使えそうかも?
駒村清明堂さんいわく、ほんものの線香(ここでは杉線香のこと)とニセモノ(現在の一般的な線香)の違いは燃え方にあるのだそうです。
線香は籾灰に立てて灯しますが、ほんものは灰の中の部分まで燃えて無くなり、ニセモノは灰の中の部分が燃え残るといいます。