[3] 古民家で宝探し|手順を踏んで堂々と
2021/09/13
前回はスケジュールの一コマしか消化できませんでしたが、今回からは少し早足で進めます。
いただいたもの(戦利品?)の紹介を急ぎたいと思っています。
〈現在の状況〉
引き抜いたり剥がしたり、自力でやれる解体作業は限られていました。
躯体の解体には重機が入るし、〔臼〕や〔竈(かまど)〕だって、とても一人では運び出せません。
また、高さや幅のある〔階段〕や〔木戸〕だって、軽トラで運ぶには難しいかもしれません。
つまり、これからの作業は、職人さん"ありき"なのです。
なんとも情けないようですが、ここでは当然、"職人さんたちの仕切り"に従います。
職人さんたちに、「やっぱり面倒だったな...」と思われないように心掛けるつもりです。
元は薬屋さんと聞いていますが、家族で暮らしていた様子をうかがい知ることが出来るようでした。
奥にはキッチンがあり、生活雑貨で溢れています。
僕の頭の中で補填されたキッチンでは、夕食の支度をするお母さんがいます。
その足には、小さな子どもがまとわりついています。
お爺ちゃんとお婆ちゃんは今でも協力しあって薬屋さんの店先に立っているし、あと少ししたら帰宅するお父さんは、きっと眼鏡を掛けていて博識で、穏やかな人かもしれません...
あっという間に、古民家の解体作業は大詰めです。
つまり、ここへ入るのも〔これでお終い〕
キッチン横の居間?では、古道具で溢れかえっていました。
写真を見ながら振り返ると、あれはなんだろう?これは持ち帰れば良かったかな?と古道具への思いは尽きません。
この箪笥だって、今にして思えば十分使えるように見えます。
品定めの観点から思うと、「これだけは見逃してはいけない」というものくらいは分かっているべきだと思いました。
〔感覚よりも知識〕がモノをいう世界のことを、もっと学ぶべきだということなのだと思います。
ガラスの形状や釉薬(うわぐすり)の違い、塗料の知識、使われる材の種類と加工の施し具合、今の僕にはどれも付け焼き刃のような知識しかありませんが、また縁があるかもしれないので、その時はもう少し目が肥えていなければいけないと思いました。
実物に触れながら実践的な知識を身につけ、致命的な取りこぼしのないサルベージを心掛けたいですね。
〔階段〕や〔竈(かまど)〕などが、古民家の解体に伴い取り外されていくわけですが、それらは職人さんの良いタイミングで、僕の土地まで運んでいただけることになっています。
その為、こちらから解体現場へ行く必要はなくなりました。
しかし、古民家の解体現場は、よく行く郵便局の斜向かいです。現場の前を通る時には、「こんにちはー!」と、挨拶がてら様子伺いをすることもありました。
現場では、搬入の日時を話し合うだけでなく、「こんなの出てきたけどいる?」とか「奥の蔵には◯◯があったけど欲しい?」
など、親方は随分と気に掛けてくれているようでした。
日を追うごとに、郵便局へ通うよりも解体現場へ行くことの方が重要に思えてきました。
そんなある日の解体現場でのこと、これまでに見たことのなかったヘルメット姿の男性が立っていました。
管理会社の方でした。
「話には聞いていますが、一応先方(古民家の持ち主)にも、家具や柱など、欲しいという希望者がいる場合、引き渡しても良いか了解を得なくてはなりません。その為、住所や連絡先を教えて欲しいのです。」
確かにその通りだと思ったので、言われがるままに必要な情報を伝えました。
※これで正規の手順を踏んだことになるのだと思います。
後は、管理会社からの連絡が入るのを待つだけなのですが、「あげるよりも処分した方が楽」となれば、この話は無くなってしまいます。
既に貰っているものもあるので、今後の話が白紙に戻ったとしても十分満足しなくてはならないのですが、そう簡単に割り切れないのが人間の性というものでしょう。
僕は少し暗くなった気持ちのまま、数日を過ごすことになります。
数日が経ったころ、管理会社から連絡が入りました。
「住んでいるところのハッキリしている方なので、特に問題はありません。とのことでした。欲しいものがあれば、蔵の中の物もどうぞ。」
内心ヒヤヒヤしていましたが、一安心です。
因みに、古民家の奥には〔蔵〕があります。
先方の了承が得られたタイミングの都合で、結局この〔蔵〕には入ることが出来ませんでした。
〔蔵〕には僕より先に業者が入っていたので、どちらにしても、それほど期待は出来なかったかもしれません。
管理会社からの連絡をいただいたその日のうちに、〔お酒〕を持って現場へ挨拶に行きました。
ちょうど近くの酒蔵の開放日だったのですが、日本酒はやめ、無難にビールを選択しました。
※人に渡すビールは〔エビスビール〕と決めています。あくまで僕目線ですが、日頃、手の出し易いお酒を飲んでいるからこそ、このような時には少しだけ良いものを飲んでいただきたいと思います。
6缶セットを人数分用意しました。
翌日、トラックに乗った職人さんが二人、〔梁〕や〔竈(かまど)〕、〔臼〕などを、3回に分けて搬入してくれました。
〔竈(かまど)〕や〔臼〕など、明らかに一人では持ち上がらないものは、職人さんも率先して手伝ってくれるのですが、〔梁〕のときは少し違いました。
〔梁〕には様々な大きさ太さがありますから、中には一人で運べてしまえるものもあります。
気が付くと僕らは、力比べのような遊びを始めていました。
その為、全ての搬入が終わる頃にはまさに"ヘロヘロ"といった状態でした。
今日僕は嘘をつきました。
— 森のテロル (@morinoterror) March 3, 2016
名前も知らない親切な方と、もの凄く重たい「梁(はり)」を運んでおり、最後の方で少しバテてしまった時のこと、
「あ、すいません、さっきまで腕立て伏せやっていたもので…」
咄嗟に口をついて出た嘘としては、多少なりともウィットに富んだものになったのが救い。
これだけの梁や柱を頂きましたが、これは古民家の極一部分でしかありません。
これの何倍もの建材が処分されたことも事実です。
もし、僕が人を集めることが出来て、運搬のための大きなトラックも、解体した柱や梁を置いておけるスペースも準備出来れば、これは十分商売になると思います。
本気でやればお金持ちになれるかもしれません。
ですが少し忙しそうなので、僕はやらないと思います。
「梁」と一緒に、「階段」を持ってきていただきました。
今回いただいた古い家具には、蜜蝋に唐辛子などの防虫対策がされたワックスを使うことにしました。
〔竈(かまど)〕です。※〔おくどさん〕ともいうそうです。
これは重たくて運搬が大変でしたが、濃紺のタイルが特に良いと思っています。
室内(土間?)で使う場合は、煙突を繋ぎます。
何時か使う日のことを想像するだけで楽しい気持ちになります。
〔囲炉裏〕か〔掘り炬燵〕か?
これは、古民家の2階にあった珪藻土のものではなく、石を繰り抜いて作られたものです。
1階の広い部屋にありました。
これをどうやって活かすかはこれからの課題ですが、こちらもとても楽しみです。
※ちなみに、これは〔竈(かまど)〕の比ではないくらいに重たく、ここからどうやって動かすのか、先ずはそこから考えなくてはなりません...
少し長くなってしまったので、ここで一旦区切ります。
おしまい。