暮らし

プロの味とボケた味

2016/10/05

(これは02/08/2016の「今日のニテヒ生活」の記事に加筆したものです)


煤けた鍋

道具は使えば汚れるものだし、その汚れもまたいいものだと思います。

ぴかぴかの鍋よりも、少しひしゃげて焦げのついたもののほうが見てくれもいいと思います。

 

そういう訳もあってか、これまで鍋を洗う手にはあんまり力が入っていなかったような気がします。

それで、わたしの片手鍋はいつの間にか外側がキツネ色になっていました。
(内側はきちんと洗っていました)

 

去年のことです。

たまにお邪魔させてもらう知人宅で、七輪の上に置かれた鍋に目が留まりました。

鈍く光る鍋は、京都有次の職人さんの手作りの品で、すでに十数年も使われてるとは思えないくらいキレイでした。

かといって新品のようでもなく、手入れの行き届いた美しさがありました。

上品だな、と思いました。

 

それは両手鍋でしたが、もうひとつ、有次の雪平鍋が薪ストーブの上に乗っていて、これもまたよく磨かれていました。

しかし上から見ると、丸いはずの鍋がオーバル型になっていたし、横から見ると底が曲がっていて触れるとガタガタといいました。

どうしたのか訊ねると、力いっぱいゴリゴリと磨くから、アルミ鍋は柔らかくて曲がってしまうのだと云う。

 

そんなにも力を入れて洗うものなのか!と驚くと共に、以前何かで読んだ料理家であるホルトハウス房子さんのインタビューを思い出しました。

”料理に使った器具は、ブラシを使ってガシガシ洗うのよ。

家庭料理の味が呆けているのは、前回作った料理の匂いなんかが鍋に残っているからよ”

と、おおよそそんなことを云っていたと思います。

 

知人とホルトハウス房子さん、2人に共通するのは料理が上手であること。

ホルトハウスさんの料理は食べたことありませんけども。

 

さすがにわたしも心を入れ替えて、その日帰宅するなり、キツネ色の片手鍋を引っ張りだしてきて、研磨剤代わりのクエン酸と劇落ちくんを駆使して磨き上げました。

腕が上がらくなるくらい力を込めて。

そのくらいやらないと、長年の汚れは落ちなかったのです。

 

突然始めた作業だったのでビフォー写真は無いんですが、こちらがアフター。

中尾のアルミ鍋をみがく

コックおじさんの線が薄くなっているのは、以前グラインダーで磨こうとしたところ、あまりにも削れてしまい慌てて中止したときの傷跡です。

ところどころ焦げが残っていますが、どうしても落ちませんでした。
却って使い込まれた風合いになって良くなった気もします。

同じく汚れた雪平鍋は、表面がボコボコした加工になっていて磨き辛くて諦めました。
気が乗ったら、またやります。


近頃では、匂いまで残さず洗うように心がけています。

 


※中尾のアルミ片手鍋。
どうもこの鍋にはシェフのおじさんの顔がないみたいです。

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