食卓

高速干し柿!無精心から発見したカンタン干し柿のこと

2016/09/07

(これは11/08/2015の「今日のニテヒ生活」の記事に加筆したものです)



柿の木と柿の実

いよいよ秋も深まるにつれて、色づいた葉が散りはじめました。

そんななか特別存在感を示すのが柿です。

ほかのどの木よりもひと足早くすべての葉を落とし、はだかになった枝先に熟れた実をいっぱいに残している姿をあちこちで見かけます。


このあたりの家ではたいてい庭先や隣接する畑などに柿の木が植わっていて、季節が来ればきちんと実を結ぶのにもかかわらずそれを収穫して干すことは少ないようです。
(きっと昔はやっていたんだと思いますが。)

それでもたまに、よく日の当たる軒下いっぱいにずらりと柿を吊るしている家を見かけることもあってそれは圧巻です。


このあたりに植わっている柿の実のうち、実際に干して食べられているものは5割にも満たないんじゃないかと思います。
残りは冬の前に地面に落ちて、ぐちゃっと汚す運命なのです。

土の上に落ちてくれれば気にもならないんですが、それがアスファルトの上だった場合いたたまれない気持ちになります。

柿の木の持ち主さんたちは、自分は柿の実が不要ならば木の横に札でも立てて「ご自由にどうぞ」と一筆書いておいたらいいのにと思わずにはおられません。

わたしはきちんと収穫された柿の木を見るのが好きです。

 

柿の木

軒下に干された柿

 

今年は渋柿がひと袋分手に入ったので、例によってインターネットに教えてもらいながら干してみました。

本当言うと干し柿は得意ではありませんでしたが、最近になってようやくおいしいかもと思えるようになりました。
白く粉を吹いた干し柿は見ためにも美味しい。


さて、柿の皮をむいていきます。
はじめにヘタの周りの皮をクルリとむいて、あとは下に向かって縦にむいていきました。

剥いた渋柿

 

次に紐で結んでいきます。

Tの字に残した枝に紐を結び、干したときに柿同士が触れないように間を開けるようにします。柿の触れ合いはカビ発生の原因になるんだそうです。

なんて偉そうに書きましたが、わたしの柿たちにはTの枝なんて付いていませんでした。というか収穫する時点で、後に枝が必要になることに気がつかなかったんです・・・。

長めに枝が残っているものには無理やり紐を結び付けましたが、短すぎるものはどうしたって無理です。

長めに残った枝もTではなくてIの形なので、紐を揺らすといくつか結んだ実が落ちてしまいました。

仕方ないので、針箱から布団針を取り出しヘタの少し下あたりにタコ糸を通していくことに。
皮をむいた柿はぬめぬめして持ちづらく、苦戦しました。


次にヒモで結んだ柿を、沸騰した湯に数秒間漬けます。
こうすることでカビの発生が抑えられるそうです。

冬なのにカビが発生するんですねえ。
あ、お餅にも生えますね。


これを雨のかからない、日当たりの良い、サルに狙われない(重要)場所に吊るします。

 

ヒモでつるした柿

タコ糸を通した柿

 

しばらくすると外側が硬くなってくるので、そうしたら指で揉んであげます。
すると中までしっかりと渋が抜けるんだそうです。

揉み心地は、凍らせたチューペットを揉んで溶かしている感じです。


吊るしてから数日後。

柿が数個無くなっていました。


とっさに「サルか!」と思いましたが、足元を見ると柿が転がっていました。
どうやら紐から外れてしまった様子。

布団針を出すのが面倒だったので落ちた柿を持ち帰り、ストーブの上に吊るしてあるザルに載せておきました。

これが思わぬ結果に!

 

なんとザルに乗せてからわずか2日ほどでこの姿。

ストーブの熱で干した柿


あれ?こんなところに(買ってきた)干し柿が置いてある?と勘違いするほど、それっぽいものになったのです。

同じ時期の、外に吊るした柿はこんな感じです。

外につるしていた柿はまだナマっぽい


外につるした干し柿


まだナマっぽい。
色も鮮やか。

干し柿というものはてっきり乾燥だけでなく寒さも必要なんだと思っていたので驚きでした。

 

これにすっかり気を良くしたわたしは、さっそく外に吊るしてある柿を持ってきて紐を外し、よく揉んでからザルに並べました。

仕上がりの比較のため、半分はまだ外に吊るしたままです。

ざるに並べてストーブの上につるした

こちらがザルに移動してから2日後の姿。

ざるに干して2日目の姿

 


干してから9日後。

干し柿第一号を食べてみます。

どこから見ても、立派な干し柿。
惜しむらくは白くないこと。


右手が今回食べてみる柿一号。食べる前日の御姿。

完成した干し柿たち

 

さて。

乾燥が進んで若干硬い箇所もありましたが、ほのかに甘く、ねっとりしているけれどしつこくなくて満足の出来!

ストーブの上で乾燥させれば「早い・カビない・サルいない」と干し柿作りがぐっと簡単になる気がします。

こういうものが甘い食べものの代表であった頃なら、百も二百も作って冬じゅう食べただろうなあと思います。

 


干し柿というと、マスターキートンの月餅の話を思い出します。



舞台は英国のとある中華料理店。

店主である中国人の父親とその娘、いつまで経っても半人前扱いされる見習いの英国人青年が切り盛りする繁盛店には、キートンもしばしば通っていました。

娘と秘密の恋仲であった英国人青年は、二人の仲と自分の中華料理に対する情熱を娘の父親である店主に認めてもらいたくて、キートンに相談します。



英国人の舌に偏見を持つ頑固な父親は、青年の作る料理を決して口にしようとはせず、彼が自分の店で働く理由も真剣なものではないと決め付けていました。

そんな父親を唸らせるには、通り一遍の料理を披露するだけでは足りないと判断したキートンは、店主の思い出の味である月餅を再現することでそれを実現しようと提案します。

その月餅は、レシピが口伝ゆえに失われ、店主でさえその味を完全に再現することができずにいる、まさに思い出の味だったのです。

持ち前のリサーチ力で月餅の秘密を紐解いたキートン。
月餅の秘密は「干し柿」でした。

思い出の月餅には、実は日本の「干し柿」が練り込まれていて、砂糖では表現できない上品な甘みを持っていたのです。

そしてその情報から月餅を見事に再現した英国人青年。

彼の一人前の料理人をめざす修行の日々が、ようやく始まったのでした。

(マスターキートン 11巻「特別なメニュー」より)

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