加熱&真空で長期保存!|冷蔵庫を使わない保存食の基本#3
2017/02/17
保存食の第3弾です。
これで保存食の基本シリーズはおしまいです!
冷蔵庫のない生活では、手軽で効果的な保存方法である「冷凍保存」以外の、以下のような保存方法を利用することになります。
1.水分を除去する
2.漬ける
3.加熱
4.真空状態にする
5.発酵させる
これらの方法を単独で、または組み合わせることで、長期保存ができるようになります。
保存のポイントは、腐敗の原因となる微生物の活動をゆるめたり止めたり、または死滅させることです。
1.水分を除去すると2.漬けるはこちらから
3.加熱、4.真空状態にする、5.発酵させるはつづきをごらんください。
3.加熱して酵素の活性を奪い、菌を死滅させる
加熱処理をすると酵素は活性を失い、また、ほとんどの菌は死滅します。
酸性の強いフルーツやトマトベースのソースを瓶に詰める場合、加熱処理をすれば十分ですが、酸性の弱い野菜に同じ方法は使えません。
そのため野菜は加熱処理に加えて、塩やお酢といったほかの保存方法を組み合わせることで保存します。
4.保存ビンと熱処理で真空状態にする
長期保存のために容器に詰めた食品は、再び菌に触れないように、空気を完全に抜かなくてはなりません。(真空状態)
食品を詰めて蓋をした瓶や缶を加熱すると、中の空気が膨張して外に逃げるので、密封して冷却すれば真空状態にすることができます。
[保存する容器]
ガラス製のビンは、何度でも利用できますので、経済的な保存容器です。
ビンには以下のような種類があります。
・密封ビン:
止め具のついたガラス蓋とゴム製のパッキンがついています
(レモンの塩漬けに使った「密封ビン」)
・専用の保存ビン(メイソンジャー):
強化ガラスでできた保存ビン。非腐食性の蓋がついています。耐熱性にすぐれるので高温殺菌も可能。
メイソンジャーにはシングルキャップとダブルキャップがあります。
これが「ダブルキャップ」です。(左:内蓋、右:外蓋)
いちどビンに装着した蓋をはずしますと、内蓋だけがしっかりと密着して残ります。
(古道具市で購入した古いビンなので、ちょっと錆びています)
・ワインやビールなどの空き瓶:
止め具がついていないものは、コルクで蓋をするか、キャッッピングマシーンでメタルキャップをはめて使います。
[殺菌方法]
殺菌方法にはオーブンをつかう方法や、食器洗浄機・レンジをつかった方法がありますが、ここでは電気を使わずに作業しますので、煮沸をして殺菌します。
1:ビンと蓋をよく洗ってから鍋に入れ、浸るまで水をいれてゆっくり沸騰させます。
2:火を止め、使うまでそのままにします。
※殺菌はビンを使う直前に行います
[密封方法]
1:フルーツやソースを詰めたあと、ビンに蓋をのせます。
メイソンジャーを使う場合は、蓋を閉めた後、1/4回転だけ開きます。
金属のクリップがついた保存ビン(WECKなど)の場合は、止め具をかけて固定します。
2:大きな鍋の底にふきんや新聞紙を敷いて、ビン同士が触れないように並べていきます。
3:ビンの上2.5cmまで水位がくるようにして鍋にぬるま湯(38℃くらい)を張り、鍋にふたをしてゆっくりと沸騰させ、所定の時間煮立たせます。
その後トングなどを使ってビンを取り出して蓋を閉めます。
4:完全に密封されているかは、脱気作業から24時間後に確認できます。
ダブルキャップ、クリップ止めの場合:外蓋またはクリップを外し、中蓋に爪をひっかけて動くか確認します。
動かなければ密封成功、動いた場合は失敗しているので、保存せずに食べます。
5.発酵させる
発酵とは、乳酸菌の酵母などの有用微生物を利用して、保存期間の長い食品や飲み物(ビール・ワインなど)を作ることです。
きゅうりやキャベツなどの野菜の場合、塩でほかの雑菌の繁殖を抑えて乳酸菌だけを増殖させ、それらの乳酸発酵によってピクルスを作ることができます。
(ピクルスのイメージ)
野菜の発酵食品といえば、日本にはぬか漬けが、広くアメリカ・ヨーロッパにはピクルスが、ドイツにはザワークラウト(キャベツの塩漬け)が、インドネシアにはテンペ(大豆)が、中国にはザーサイ(カラシ菜)があるように、また、チーズ・バター・ヨーグルトなどの乳製品はそれこそ世界各国に、発酵調味料もフルーツから作るお酢、豆から作る各国の味噌など、世界は発酵食品であふれています。
発酵させることで新しい風味が生まれ、栄養価も上がるだけでなく、食品の保存性を高めるという、はるかむかしから連綿と受け継がれてきたこの方法は、身近にありすぎて見落としてしまいそうになりますが、最近は雑誌でも特集されるなどしてその良さが再認識されています。
ただし、冷蔵庫のない場合は冷暗所に保存し、瓶詰めのピクルスなどは一度開封しましたら雑菌が繁殖しやすいため、冷蔵庫で保管することが推奨されていますので、面倒でも小さめのビンを複数用意して、1日2日で食べきれる量を詰めていく方法が、冷蔵庫のない生活にとっては現実的ではないかと思います。
ところで今、パオツァイを作っています
パオツァイ(四泡菜)は、中国四川省で古くから作られているピクルスです。
塩水の中に野菜を漬け込み、炒め物やスープに利用したり、そのまま食べたりします。
以前四川省に数週間滞在したことがありまして、毎食が外食でした。
何十回と食べたそのうちのどれかのメニューに、パオツァイが含まれていてもおかしくはない状況だったはずなんですけれど、食に関する知識に欠けていましたので、そのようなものには気が付かずじまいでした。
そんなパオツァイですが、手間が掛からないうえに味も悪くないという、とてもいい発酵食品なのです。
用意するものは、塩と水だけです。
だいたい5%の塩分濃度になるように塩と水とを用意します。
塩分濃度を計算する数式を忘れて調べたので、メモしておきます。
塩分濃度(%)=( 塩の重さ / 水+塩の重さ )× 100
そして、塩と水を混ぜてから沸騰させて冷まします。
冷めましたら煮沸したビンに溶液を入れ、まずは2-3日野菜の皮などを入れて試運転をします。
(塩水をビンに詰めたところ)
試運転終了後は、好きなやさいを入れておけばいいだけです。
溶液がなじんできますと、一晩でおいしく漬かるようになります。
何も漬けるものがないときは、溶液の入ったビンをたまに振ってあげるだけでいいという手軽さが好きです。
塩の入った溶液は、うまくすればずっと使うことができるそうで、その味は、ぬか漬けにかなり近いものだと思います。
コショウ粒や八角、コリアンダーシード、唐辛子などを入れると味が変わってそれもまたおいしいとのこと。