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仕事 森のテロル

小屋暮らしの雇われ仕事|子供とお爺ちゃんの眼差し

2017/02/24

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GWに入り、便利屋のような仕事は廃業、今度こそ宿泊施設らしい仕事が始まりました。
どんなに仕事を覚えたところで、ある一定以上に仕事が楽になることはなさそうだと感じ始めた3シーズン目。
 
 
起きる時間は、東京では早朝の5時だったけど、今は7時に変わった。だけどやっぱり目覚ましで起きる朝は最悪だったし、なんといっても夜更かしが面白くなくなるのは辛かった。
 
これに加え、僕は原因不明の体調不良に見舞われていた。思い返せば、丁度一年前も同じように不調だったと気が付いた。
 
頭が重く、気分が落ち込み、集中力が直ぐに途切れてしまう。
それに伴い、失敗も多くなった。
 
やることなすこと全てが上手くいかないと錯覚するほど、暫く不調の日々が続いていた。
 
あれだけ夢中になっていたTwitterですら、続けられなくなった。
 
季節の変わり目、木の芽時という言葉を知り、パソコンで随分と検索した。
 
雇われ仕事特有のジレンマだって当然ついてまわるのだから、少し大変な時期だったと思う。
 
こんな気持ちで働いていたのだから当然、仕事には身が入らず、悪循環に陥っていた。
 
 
そんな僕を嘘みたいに救ってくれた存在について、出来るだけテンポ良く、簡潔に書きたいと思います。
 
 
 

その子(以下F子ちゃん)の誕生日はGW期間中にあります。毎年この時期に泊まりにくるのだから、これは誕生日プレゼントの一環なのかもしれない。いや、そうに違いないと思う。

 
都会にはないスケールの自然に触れて破顔したF子ちゃんを見た時に、その考えは確信に近いものになった。
 
 
一年に一度しか来ない誕生日に行きたいと思う先が、僕の務める宿泊施設なのだとしたら、下を向いてばかりはいられないと思った。ただ、そう思うばかりで、沸き上がる情熱のようなものはそう簡単に戻って来なかった。
 
 
F子ちゃんにとってここは、多くの子供達が目を輝かすテーマパーク、例えばディズニーランドにとって変わる場所なのだと思う。
 
だから僕は頼れるガイド役や、インストラクターの役割を担う必要があるように思った。
時にはミッキーやグーフィー、プーさんの代役を買ってでなくてはならないかもしれない。(※僕は働いているのでプーさんじゃない。)
 
 
「幾つになった?」「10歳です。」
 
 
毎年来てくれるので、彼女と会うのも3回目。
 
初年度は一人昆虫図鑑を持って施設内を探索する賢い子供といった印象だった。
見つけた昆虫と図鑑を照らし合わせ、僕に説明してくれたことを覚えている。
 
 
2年目も相変わらずの昆虫好きで、初年度同様、図鑑に書かれていたことや、父親から教わった昆虫の知識などを教えてくれた。
 
急激に身長が伸びたことと、別れ際に車からずっと手を振ってくれたことが印象的だった。物静かな子供だと思っていたので、勢い良く手を振る姿に、少し驚いたのだった。
 
 
今年、更に大きくなった彼女の手には何度も読み返していることが分かるほどにくたくたになった鳥の図鑑があった。
 
決して昆虫に飽きたということではなく、鳥にステップアップを果たしたといった印象。
 
 
多くの子供たちは直ぐに他の子供と仲良くなることが出来ていた。
皆でボール遊びをしたり、火が付いたように園内を走り回ったりする中、彼女は誰とも仲良くせず、一人昆虫を探したり、ボールを宙に放ったりしていた。
 
 
彼女は僕と同じ、人見知りかもしれない。
 
 
午後になり仕事もひと段落、僕はオープンの準備期間中にやるべきだった仕事のやり忘れがあることに気が付いていた。
それは園内の電源BOX内の清掃という、大した仕事でもないのだが、それでも仕事が暇になる度に少しずつ、園内を回って電源BOXの掃除をしていたのだった。
 
 
ちょっと先にある電源BOXに向かう途中、F子ちゃんを見つけた。
 
F子ちゃんは縄跳びを持っていたけど、飛んではいなかったし他の子供と遊ぶこともなく、やっぱり一人だった。
 
 
「やあ、元気?」
「はい。元気です。」
 
 
そういえば今年から敬語を使っていることに気が付いた。
 
僕の向かう先に興味がありそうだと感じたので、
 
 
「お兄さんはこれから、あそこの電源BOXの掃除に行きます。」
 
 
と言って電源BOXを指差すと、まるで楽しいことをしに行く人を見るような、羨ましそうな顔をしたので、「行く?」というと、彼女は大きく頷き、とても嬉しそうに「うん!」と言った。
 
 
「おっ」となった。
 
 
掃除のし忘れた電源BOXを開けると、案の定、至る所に蜘蛛の巣が張っていた。
中には袋状の巣もあり、それを落ちていた木の棒で突くと、中から真っ赤な1㎜にも満たない蜘蛛の赤ちゃんが無数に飛び出してきた。
 
その後、蟻と蜘蛛の赤ちゃんとの攻防があったり、そこでとった親蜘蛛の行動、ミクロの子蜘蛛でも糸を出せるなど、書こうと思えば幾らでも書けてしまいそうな出来事が次々に巻き起こり、僕たちは一気に仲良くなった。
 
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それから僕らは園内で会うと、変なルールのボール遊びをしたり、縄跳びをしたり、好きな漫画を教え合ったり、ある時はレセプションで小一時間、鳥図鑑を読みながら、お互いの持つ鳥豆知識で競い合ったり、一緒にお菓子を貰って食べたりした。
 
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どんな豆知識を教わったか忘れない為にも、とりぱん大図鑑を入手するのも良いかもしれない。
 
 
最終的にはとてもおしゃれなF子ちゃんの両親とも仲良くなり、誕生日プレゼントとして渡したポッキーのお返しにと、ポラロイドカメラ(チェキ)で2枚、写真を撮ってもらい、それぞれ1枚ずつ持つことにした。
 
 
僕は結婚もしていないし、子供もないのに、それらを一気に通り越し、お爺ちゃんのような眼差しでF子ちゃんを見ていることに気が付いた。
 
 
孫を持つお爺ちゃんは寿命が削られようとも、精一杯、孫に尽くすのだろうな、と思った。教育や躾の類には一切関知せず、只々孫と楽しく遊ぶことだけを考えている。ある意味無責任でもある。
 
孫の一挙手一投足に意味を見出し、日々の成長を確かめることが生き甲斐になっている方も多いのではないだろうか?
 
僕はそんな雰囲気を少しでも感じ取れただけで十分収穫だったし、僕にはこれくらいの思い出で十分だと改めて思った。
 
 
身の程を知るということは辛いことばかりではなく、ある意味で楽になることでもあるのかもしれない。
 
本当のところは良く分からないのだけど。
 
おしまい。
 
fix
 ※変な髪型にも見えますね…
僕は帽子を被っています。念のため。
 
《おまけ》
 
僕がF子ちゃんのことを賢いと思った出来事を幾つか。
 
・蜘蛛の子供が蟻に襲われた時、僕はおこがましくも、「助けてあげる?」と聞いてしまった。F子ちゃんは「こういうのは、そのままにしておくのが良いと思う。」と言った。
 
・彼女は男の子っぽいと自称し、好きな漫画はチャオではなく、コロコロコミックだし、本当に読みたいのは少年ジャンプだし、ゆくゆくはモーニングを読みたいと言った。「えっ、モーニングってお父さんとかが読む漫画じゃないの?」と聞くと、とりぱん大図鑑が連載されているからと言った。 
 
・レセプションでとりぱん大図鑑を読み聞かせて貰っているとき、F子ちゃんが読み間違えたり読めなかったりした漢字を、僕は指摘したり、代わりに読んであげたりした。彼女はきちんと自分でも、少し前の文に戻って音読をやり直した。
 
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・TVは見せてもらえるけど、ゲームはお父さんに禁止されていると言った。僕はお父さんの考えが分かると言った。でも、たまにお母さんのスマホアプリで遊ばせてもらえることがあるのだと笑っていた。
 
とりぱん大図鑑で鳩の説明文に、エジプトではポピュラーな食材と書かれていたので、僕もエジプトで食べたことがあるけど、脂っぽくて、少し臭く感じたから苦手だったよと言った。その際、普段の調子で、「この時は動物肉を絶つ前だったからね」と前置きをしてしまった。するとF子ちゃんは、「ベジタリアンなんだね」と言った。難しい言葉を知っていたことに驚いたと伝えると、それはとりぱん大図鑑を読んでいるからだと思うと言った。
 
 
 
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