タイニーハウスピリオディカルズ

タイニーハウスピリオディカルズ|電気ガス水道を契約しないオフグリッドでDIYなセルフビルドの小屋暮らし

もの・こと・ひと

小さな家を建てる前に考えること

2017/04/28


一年ほど前に発売された漫画雑誌に、次のようなコラムが掲載されていました。

「スモールハウス・ムーブメントとは」というタイトルの1000文字ほどのコラムです。

前半部はムーブメントについて、後半部は著者のDIY体験について書かれています。


その前半部分を要約すると、

ジェイ・シェファーが作った車輪付きのスモールハウスが建築雑誌で賞をとり、全米から注目を集めたことからスモールハウス・ムーブメントが急速に広まっていった。

やがてその動きは全世界に波及していくが、もともと小さな家で暮らしているアジアやアフリカの人びとにはこういう発想は受け入れられるとは思えなかったがしかし、日本では受け入れられた。

それは家にかかる費用があまりにも高いからだ。

このムーブメントがローン地獄から逃れる光明に感じるからかもしれない。


「小屋を選ぶこと」イコール 「家の建築費用の節約である」という視点だけで語るのは勿体無いな、というのが読後の感想です。

が、その雑誌はいわゆるおじさん世代をターゲットにしたものですので、むべなるかなという気もします。


それでも「小屋ブーム」は、共時的に捉えていたらば、このまま商業主義によって淘汰されていってしまうかもしれません。

 

住む家の大きさを変えることの意味と役割


タイニーハウスムーブメントの根幹にあるものは、極端に小さな家に住むことで身の回りをダウンサイズすること、ダウンサイジングを通して生活を変えることであると、多くのタイニーハウス住人は言います。

いってみればダウンサイジングムーブメントと呼んてもおかしくないこの発想は、所持品のミニマル化やシンプルな暮らしを目指すシンプルリビング(ミニマリズム)と源流は同じだと言いうるものです。

シンプルリビング(清貧とはちょっと違う?)という考えかた自体は古く、宗教的にはブッダやイエスにはじまり、それに影響を受けたのが例えば、シュヴァイツァー(ドイツ出身の医者・哲学者)やトルストイ、ガンディーであり、また、ギリシャの哲学者ディオゲネスは、大きなワイン樽を居とし、自らの思想を体現して犬のような生活を送った興味深い人物ですが、これもシンプルリビングの極致のなかの一点と言えるでしょう。

そしてソロー、ウィリアム・モリス(植物柄で有名なデザイナー)などもシンプルリビングの思想に影響を受けた人物といわれています。

ディオゲネス
(樽に寝転ぶディオゲネス)


話が逸れてきましたので話題を小屋に戻しますと、小屋ブームというものは、突如として無から現れたものではなく、いくつかの水脈がだんだんに合流していき、そして湧き出すがごとく表出したものではないかということです。

生活をダウンサイジングした結果、必ずしも「小さな家」に住む必要はない、けれど、それを選ぶ人がこんなにも後を絶ちません。

もちろんその選択には大いに「お金の節約」が絡んでいると思いますが、ダウンサイジングの成功の証として小さな家を選ぶ、もしくは成功させたいからこそ小さな家を選ぶ、ということもあるのではないでしょうか。


だから、そうなんですよ、「小屋ブーム」の名の下、現状の暮らしをそのままに、物置小屋を建てました、仕事小屋を建てました、っていうのは、ムーブメントの表面をなぞっているだけで、むしろ本質とは逆のことをしているといえると思うんです。

小屋をまったくのエクストラとして利用するだけでなくて、小屋を建てることは生活を見直すチャンスになると思ったら、ちょっと違ったカタチの小屋ができるかもしれません!

 

荷物を減らすことの利点

 

「荷物を減らすことの利点とは、時間と、お金と、空間と、労働力の節約である」

 

アメリカでの話ですが、ある老夫婦が自宅の整理をしました。

何十年もの間溜め込んだ、大量の本、衣類、家具、家電。

それらはリサイクルへ出したり、今は独立している子どもたちが各々自宅へ持ち帰って、友人が集まったときに欲しいものがあれば配るなどして、所持品の約75パーセントを処分したそうです。

そして夫妻は小さめのアパートへと引越しをしました。

荷物の少ない室内は、掃除が行き届き、整頓され、ストレスが軽減したといいます。

以前の家では気に入った写真を壁に飾っても、部屋に溢れたモノがうるさくて目立たなかったけれど、新しいアパートではじっくりと味わうことができる、ものを減らすことは、時間を取り戻すことである、と。

この老夫婦はダウンサイジングの結果、小さなアパートに住むことを選びましたが、タイニーハウスムーブメントでは、多くの人が自身で家を建てることを選択しています。

もちろん費用の節約もあるのでしょうが、何でも自分で作ってみるという文化がアメリカには根付いている気がします。


さんぽ途中に知り合ったオレゴン州出身のジョンと、セルフビルドの話になったときに、

「ぼくの父親も自分でいろいろ作っていました。工具を収納する納屋とかね。近所の人もみんな同じでしたよ」

と言って、懐かしそうに目を細めていました。

 

狭小住宅と小屋


タイニーハウスムーブメントにおいては、小屋とされる大きさに暗黙のルールがありますが、それがだいたい37㎡以下なんです。

アメリカでこのサイズはさぞ衝撃的であろうとは思いますが、しかし、37㎡以下の家といったら、住宅事情の良くないとされる日本でもこう呼ばれるはずです、「狭小住宅」と。



日本では1950年代ころから極端に小さな住宅が作られていました。

増沢洵「最小限住宅」 1952年
建築面積:29.75㎡ 延床面積:49.58㎡

東孝光「塔の家」 1966年
建築面積:11.0㎡  延床面積: 65.0㎡

石井和紘「赤坂拾庵」 1983年
建築面積:20.26㎡

池辺 陽 「石津邸」 1958年
建築面積:55.0㎡ 延床面積:64.4㎡(←ちょっと大きい)

代表的なものだけ列挙しましたが、3坪ハウスとか9坪ハウスだとか愛称がつけられるほどに印象深い家たちです。

昨今のムーブメントで建てられた小屋たちは果たして、何十年というスパンを超えたのちまで生き残るでしょうか。


それにしても「狭小住宅」と「小屋」、それぞれから受ける印象がずいぶん違うのは私だけでしょうか。

なんでか小屋を狭小住宅と読み替えてはいけない気すらしてきます。

 

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